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一昨日来やがれ!! 明後日の方向を向いたアルバム
もしくは、ドキュメンタリからファンタジーへの回帰

byakkoya
 
平沢進
白虎野
ケイオスユニオン(TESLAKITE)
2006年2月2日発売
CHTE-0034
3150円

01. 時間の西方
02. 白虎野
03. 生まれなかった都市
04. 記憶から来た男
05. 水脈
06. CODE-COSTARICA
07. Σ星のシダ
08. 確率の丘
09. 白虎
10. パレード
 
引用と転載だらけの新形式レヴュー


「分岐」と「確率」をキー・ワードに「もうひとつの世界」を描き出す、10作目のソロ・アルバム。
シンフォニーから正体不明のノイズまで、あまたのサウンドを攪拌したポップかつ荘厳な万華鏡的音宇宙。
時空を超えて漂白する観察者・平沢の異次元紀行録、それは現実を映すスクリーンかもしれない。
(インラクティヴ・ライヴのポータル・サイトより)

全体としては「平沢流SF小説」といったふうで小説的世界を音楽で表現したような印象。
時空を超えて、どこにでも現れる「観察者ヒラサワ」がさまざまな世界に顔を出し、その世界レポートする、新世界紀行。
忘れ去られた原風景(心象風景)あり、1984的逆ユートピア(というか「逆浄土」?)あり。
たとえるなら『タイタンの妖女』のような、ヴォネガット的「時空しゃっくりの旅」といいますか。

もちろん『Blue Limbo』『ビストロン』の流れはあるものの、欺瞞を暴きながらも、しかし、直対応的な怒りはない。
飄々とした「時空放浪者」のようです。
ただし、ラストは曲自体は楽しげなマーチにもかかわらず
描かれる世界は核P-MODEL並みに恐ろしい。
これは「来なかった近未来」もしくは隣の宇宙の話だと思いたい。

サウンドとしては、初期作品を思わせるメロディが顔を出すかと思えば、定番あり、新機軸あり、変態的なギミックあり、沖縄民謡(?)ありで、
平沢ソロの「あらゆる手口」を盛り込んだ集大成的なニュアンスもあります。
『賢者のプロペラ』『Blue Limbo』で試まれた上がりきらず、下がりきらず、爆発しきらない「寸止めメロディ」のスタイルも完成を見たようです。

弦楽器の音源が変わったせいか、音の感触もこれまでとかなり違います。
生音的にリアルで、解像度が高くなったというか、オケの段階ではもっと初期作品にイメージが近かったので
「平沢、原点回帰のネオ・ナチュラル・サウンド」
というキャッチが頭に浮かんだくらいです。
トラックダウンを終えてみると、そういうテイストでもありませんけど。

個人的には、遊びや余裕がある「ふざけた感じ」のサウンドが好きですね。
あと、NHKのBSでやってたコリアン時代劇『大長今』の主題歌なんかに通じるような民謡テイストもつぼを刺激します。

「白虎」は西を守る四神のひとつなわけで、なんとなく諸星大二郎テイストもある言葉ですが、陰陽師ブームの時だったら、誤解されてそうです。
「時間の西方」って曲もあるので、そっち方面かと思ったら、これは「さいほう」ではなく普通に「せいほう」と読むらしく、そっち方面ではないようです。
「時間の極楽浄土」っていうのもすごいものがあるけど(笑)。

ジャケットは

1)地球の断面 (地殻、マントル、コア)
2)脳の断面 (新皮質、古皮質、旧皮質)
3)卵細胞と精子
4)地球と成層圏

とか、いろんなものに見えるのですが、
それはいろんなものに見えるようにデザインしているからでしょう(笑)。
(1)だとすると、火を噴いてるのはいったいなんのアナロジなんでしょう。
(4)だとすると、オゾン・ホールでしょうか。
「時間の西方」という曲がありますが「地球の西方」といっても、
相対的なので、どこを中心に見るかで違ってきますね。
「脳の西方」では、なおさらわけわかりません。
ま、もちろん「西方」は譬喩なんでしょうけど。

(以上、当サイトBBSより)

こうした時間の概念と空間の概念の交錯した言語感覚から、ふと連想したのが「おととい来やがれ!」「あさっての方向を向く」なんていう不思議な日本語である。
まあ「おととい来やがれ!」は「もう来るな」と翻訳可能であるからいいとして「あさっての方向」ってどっちなんだろう。
どっちでもないから「あらぬ方」「見当違いな方」ということになるのか。
「時間の西方」はその逆であって「西の時間っていつよ?」と訊きたくなるのが人情というものだろう。

というわけで、訊いてきました。
以下は平沢進ファン・クラブ会報「GREEN NERVE」で行ったメイルによる平沢インタヴューの質問部分です。
そんなものになんの価値が!? といぶかる人もいるでしょうが、質問だけで連ねると一種のレヴューとして読めるので、これはこれで面白いんじゃないかと思います。
なお、会報に掲載される文章は、やや短く編集しています。
(8/17発行のNo.20に前半に掲載、後半は次号No.21に掲載予定)
回答部分も自分で書こうかと思いましたが、それだと「架空インタヴュー」という某雑誌で大昔にやっていた企画のパクリになってしまうので、やめました。
平沢進の回答部分はぜひファン・クラブに入会してお読みください(笑)。


アルバム・コンセプトについて大いに語る


Q.ホワイト・タイガー油田(White Tiger Oil Field/Bach Ho Oil field)を新作の「物語」のベースにしょうと思ったきっかけは? (註1)

Q.ホワイト・タイガー油田を取り上げようと考えたのは、曲ができあがる前ですか、制作中ですか、それともすべてできあがったあとですか?

Q.実は密かに「白虎野=アナザー・ゲームのための余白」説をとっていたのですが(笑)。表現方法は常に進化しつつも、やはり、音楽の根本は変わらないというか、いつも一貫していますね。

Q.「分岐」「確率」という、これまでも平沢ソロを象ってきた重要な要素を改めて前面に押し出し、中心的なテーマに据えた理由は?

Q.平沢ソロの重要な表現手法だった「意識/無意識」「現実/夢」の入れ子的構造を改めて前面に押し出した理由は?

Q.『BLUE LIMBO』『ビストロン』の流れにあるとはいえ、それらの作品のような直截的な怒りの表現は減り、敢えて当事者的スタンスから身を引き、飄々と事実を伝えるリポーター的、傍観者的スタンスからの表現が基調になっているように思います。

Q.ただ「ファンタジー」という言葉はメルヒェン同様、誤解されやすい言葉です。平沢さんは「ファンタジー」をどのようなものとして位置づけられていますか。

Q.そのファンタジーの語り手は、ヴォネガット作品の登場人物のような、時空漂流者的イメージを感じましたが、意図的なものでしょうか。

Q.詞がこれまでになく散文的で、情景描写が多くなったのはなぜでしょうか?

Q.そうでしたか。平沢ソロ作品は「散文的」というよりは「韻文的」であり、また「描写的」というよりは「象徴的」であると感じていました。言葉を変えるとあまり説明的ではないというか、余白が多いというか、不親切ということなんですが(笑)。その意味で、今回の詞は「わかりやすい」ようです。それはやはり「イメージの励起を重視」した結果でしょうか。

Q.漢字が多いのはなにゆえですか?

Q.以上をふまえ、作者自身として、作品コンセプトを端的に表現するなら、どうなりますか。「現実をドライブするための幻想ナビ」以外の言葉でお答えください(笑)。

Q.サウンドとしては、初期作品を思わせるメロディが顔を出すかと思えば、定番あり、新機軸あり、変態的なギミックありで、平沢ソロの「あらゆる手口」を盛り込んだ集大成的なニュアンスを感じます。意図的に原点回帰、総決算、新機軸の要素が混在するよう制作されたのでしょうか。

Q.「新機軸」の部分についておうかがいします。音の感触が、これまでのソーラー・スタジオ(ワイヤーセルフ・スタジオ)作品とかなり違って、生音的にリアルといいますか、ナチュラルといいますか、解像度が高くなったようです。その点も、原点回帰的な印象を与える要因かと思います。今回はコーラスやオーケストレーションに新しいシステムを導入されたことが、そうしたサウンド作りに大きく影響されているそうですが、思う存分ご自慢してください。

Q.コーラス・ソフトに歌わせるのは、Amigaにしゃべらせるのより簡単ですか?

Q.アルバム『白虎野』では、Delay Lamaを使っていないのですか。また、ライヴではどのようなところで使っていたのでしょうか。(註2)

Q.管楽器や打楽器も変わった印象があったのですが、それらの音源は変わっていないんですか?

Q.いえ。歌手まで変わってしまうと困ります(笑)。サンプリングにしろ、シンセサイズにしろ、非常に音色がヴァラエティに富んでいる半面、聴き終わったあと印象はいい意味で「あっさり」としています。今回はサウンド「作り」もさることながら「組み立て」「整理」にも苦心されたのではないでしょうか。

Q.『賢者のプロペラ』『BLUE LIMBO』で試まれた上がりきらず、下がりきらず、爆発しきらない「寸止めメロディ」のスタイルは、いいバランスで完成したように感じますが、ご自身では納得がいっていますか。

Q.声(歌)やギターをサンプリングしてぐちゃぐちゃにいじり倒す手法もここ数作よく使われてますが、今回も顕著です。気が済むまで破壊し、再構築できましたでしょうか。

Q.それは「ループ」とは違いますよね。たとえば、プログラムによって再生するごとに違う結果(サウンド)を生むとか、そういうものでしょうか。(註3)

Q.当初、インストゥルメンタル予定だった曲はありますか?

Q.「記憶からきた男」「パレード」に顕著ですが、全体に譜割りがこれまでになく強引だったりするのは意識的ですか?

Q.それは失礼しました。「破壊的かつ斬新な譜割」と言い直しましょう。結果的にサウンドの異化作用としての効果は絶大だったと思います。今回のアルバムの特色づけているわけですから。

Q.「白虎野」「CODE-COSTARICA」「パレード」がベストという感想は間違ってますか?

Q.亜種音TVで今回のアルバムについて「作詞作業に関する“布置”が完了したのかもしれない」といった意味のコメントをされていますが、特に早く歌詞ができたというのはどの曲ですか? (註4)


各曲についてさらに大いに語る


01. 時間の西方

Q.前作『BLUE LIMBO』からの延長線上にあるメロディ・構成の曲に、新しい機材(ソフト)によるゴージャスなアレンジを施したテスト・ケース的な作品に聞こえます。最初のほうにできた曲なのでしょうか。

Q.ベースラインが気持ち悪いのはどうしてですか?

Q.ライヴのストーリイと直につながった詞になっていますが、作詞した段階ですでにライヴの構想ができあがっていたのでしょうか。

Q.「白虎=西」というのは多くの人が知っていますが、時間に「方角」があると知っている人は少ないと思います。時間の東西南北について教えてください。たとえば「時間の極楽浄土」であるとか「明後日の方向」を指した曲であるとか。

02. 白虎野

Q.曲ができた時に「やった!!」とガッツ・ポーズをとりませんでしたか?

Q.イントロやアウトロの声ネタは、もともとなんと歌ってるのですか?

Q.ヴェトナム語のナレーション「Nguyen Ngoc Hoa(BOUGAIN VILLAEA)」とは誰ですか?


03. 生まれなかった都市

Q.「生まれなかった都市」というのは「来なかった近未来」に通じる平沢進らしい言語感覚ですが、Amiga同様、実を結ばなかった、流産したユートピアを描いているのでしょうか。

Q.もしくは「失われた超古代文明」といったイメージもあり、コスタリカの石球にも通じます。また、違う次元、違う星の廃墟といったイメージでは「 Σ星」にも通じます。「生まれなかった都市」には具体的なイメージはありますか。

04. 記憶から来た男

Q.「死のない男」に続く「男」シリーズであり「ナーシサス次元から来た人」「庭師KING」「橋大工」に続くキャラクタ・シリーズでもあります。“Live 白虎野”の主人公はΣ-12でしたが、この男は、アルバム『白虎野』の主人公と考えてよろしいでしょうか。(註5)

05. 水脈

Q.この水脈は「時空の水」につながっていますか?

Q.この水脈は「ICE-9」につながっていますか?

Q.コーラスと弦(ピチカート)を使いまくりですが、もしかするとこの曲もテスト・ケースとして初期に作られた曲でしょうか?

Q.実はこの曲がインストゥルメンタル予定だったのではと踏んでいたのですが、違いましたか。歌っちゃいけないという意味ではありませんが(笑)。

06. CODE-COSTARICA

Q.メロよし、ギミックよし、曲展開よし、歌詞と曲の有機的結合性よし。どうしてこのようないい曲ができるのですか?

Q.曲ができた時に「やった!!」とガッツ・ポーズをとりませんでしたか?

Q.この曲のリポーター的なキャラクターが、アルバム全体のイメージ決定したように思います。ほかの曲の詞や、詞にでてくるキャラクターと物語的関連性はありますか?

Q.昔から「早くできた歌詞は出来がいいものが多い「詞と曲がいっぺんにやってきたような曲はさらに出来がいい」といったニュアンスのコメントをされています、この曲などはいかがですか。

Q.ベーグルはお好きですか?

07. Σ星のシダ

Q.「Σ-12」というキャラクタを『白虎野』で取り上げようと考えたわけは?

Q.「Σ-12」は、オゾノ・コブラノスキーのモデルになった言問橋のインテリ浮浪者、深夜のスクンビット通りで目撃した盲目の男、自分自身のある側面を合体させたもなそうですね。

Q.Σ星は「ボート」の鬼印島とは関係ありますか?

Q.Σ星は「ハーモニウム」が棲む星とは関係ありますか?

Q.「宇宙の流刑地」といった(B級)SF的イメージを持つのは間違っていますか?

Q.サビのメロディなどは初期ソロにも通じる雄大さですが、ご自身で「ツメが甘い」と感じるというのはどのような点でしょう?

08. 確率の丘

Q.まさに平沢進ここにありといった泣きのメロディと転調、そこに雄大なオーケストレーション、アジアン・テイストのコーラスや民族楽器がかぶさり、さらにTB303っぽいびよびよ音がからむという平沢ソロ集大成的な曲です。難産でしたか、安産でしたか?

Q.「確率の丘」という曲名がひらめいた時には小躍りしましたか?

Q.チャイナっぽい楽器やコリアっぽいコーラスが聞こえますが、ふだんそうした民謡は聴かれますか?

Q.ゴールデン・ドーム!?

09. 白虎

Q.平沢作品に三線っぽい音やメロディが出てくるのは非常に意外だったのですが、沖縄民謡だと思われてもいいですか?

Q.沖縄民謡というのは、意外と「禁じ手」のような気がしていたのですが、それは気のせいでしょうか。今回、そうしたニュアンスを持ち込もうとした理由はなんでしょう。

Q.魔神はムーミン谷に住んでる哲学者だったりはしませんか? 具体的なイメージがあったら教えてください。

10. パレード

Q.曲ができた時に「やった!!」とガッツ・ポーズをとりませんでしたか?

Q.詞ができた時に「やった!!」とガッツ・ポーズをとりませんでしたか?

Q.曲順が決まった時に「やった!!」とガッツ・ポーズをとりませんでしたか?

Q.オーケストレーションとドラムロールが決まった時に「やった!!」とガッツ・ポーズをとりませんでしたか?

Q.ダリコ! P-MODEL的作詞法をソロに持ち込んでしまったという後悔はありませんか?

Q.もったいないから核P-MODELのためにとっておこうという考えはありませんでしたか?

Q.すごいエコーですね。

Q.歌詞が聞き取りづらいのは意図的ですか?

Q.鎮西さんって、工藤静香も手がけていたんですか!

Q.「モンスター・ア・ゴ・ゴー」は単なるマーチからの連想とも取れますし、無意識、モンスターといった歌詞の共通性もありますが、どのような意図で入れたのでしょうか? それとも単なる遊び心でしょうか?

Q.「パレード」はもともと『パプリカ』用に作られた曲だったりますか? もしくは、ほかに『パプリカ』を想定して作られた曲はありますか?

Q.このような無意識的に恐ろしい曲をラストにもってきたのはやはり悪意によるものでしょうか?

Q.最後に作詞・作曲・編曲・レコーディングの各段階でなにかエピソードがございましたら、鎮西さんと食べた食事の話など些細なことでもでもかまいませんので、教えてください。


高橋かしこ(2006.09.01)



註1:
ホワイト・タイガー(オイル)フィールド関係を検索しても、あまり面白い記事には当たらない。
今となっては平沢関連のサイトばかりだったりする(笑)。

検索した人はここらへんを読んだことでしょう。
http://www.vialls.com/wecontrolamerica/peakoil.html
翻訳記事 http://www.asyura2.com/0505/war71/msg/275.html

まあ、たいていの人は眉に唾して読んだことでしょうが、しかし「科学的迷信」には惑わされないよう気をつけたいものです。
上記よりも、こんな記事が参考になるかと思います。

http://www.tanigaku.gr.jp/jyousiki_kikuti/jyousiki_14.htm
http://www.tanigaku.gr.jp/jyousiki_kikuti/jyousiki_4.htm

註2:
Delay Lama とはこいつのこと。
http://www.audionerdz.com/

註3:
たとえば、イギリスのアート集団トマトが作ったテレビ朝日のロゴ・マークは、定着された形がなく、ランダムにロゴを生成するプログラムになっている。

註4:
亜種音TVでの平沢は、こうは発言していない。
高橋の意訳であり、この上の表現は平沢に訂正されている

註5:
「記憶から来た男」から高橋が連想したのは筒井康隆の『エディプスの恋人』に出てきた「老天使」のイメージだったりする。
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