インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
そのわりにずいぶんディテイルまでリアルに描写されているのは、記憶だけでなく、メイルのログなど記録もとに書いているためです。
本文のあとにスキャンダブラについての解説を掲載しました。
Interactive Live 2003 への道 — その7 PowerTowerA4000炎上篇
話は2002年7月に戻ります。
PowerTowerA4000には次の問題が発生していました。
(1)熱問題
耐久テストのため、Scalaでムーヴィを3時間ほど再生していると音声・映像の出力がおかしくなり、ワークベンチ画面もフリッカがひどく、不安定になりました。
電源を切って数時間ほうっておいたら直りましたが、どうやら熱のせいのようです。ほかのスキャンダブラ同様、ToastScanもかなり熱くなっていましたし、ケース(筐体)の電源付近、上部もかなりあたたかくなっていました。
ケースを開けてみると、CPUはファンで直接冷やしてるのでそんなに熱を放出してません。
問題はPARとVideoToasterです。
両方とも使ってなくてもかなり熱くなるんですね。
そこで、5inchベイ収納式の空冷ファンをに取り付けてみました。
けっこういい感じで風が回って、熱問題は解決かと思われました、が…。
(2)衝撃・電源問題
ケースの上部にキーボードを乗せる、軽く叩くという程度の衝撃で電源が落ちる、再起動するという問題も頻発していました。
CPUの接触不良やマザーボードのせいではなく、どうも電源関係が怪しいようです。
また、たまに電源が入らないこともあって、電源ケーブルの抜き差し、放置、といった対策で復旧(?)していました。
衝撃落ち、電源不入は同一の原因かもしれません。
記録によりますと、7月13日深夜のこと。
動作チェックしているうちに、とうとうどうやっても電源が入らなくなりました。
そこで、手持ちのATX電源と交換したところ(PowerTowerで使われているのは普通のATX電源のコネクターを変換したものです)起動するようになりました。
やはり電源が壊れかけていたのでしょうか。
ところが、本体から外したあとに念のため再度チェックしたら、壊れたはずの電源が動作しました。
謎ですが、あまり深く考えないことにしてケースも閉め(衝撃で電源が落ちる現象は直っていませんが)今日はこれで終わりにしようと思いました。
(3)PowerTowerA4000炎上
すると突然、ケースの排気口からもくもくと煙が!!
一瞬、すべて台無し…すべて弁償…という言葉が頭を過ぎり、在りし日のPowerTowerA4000の姿が走馬燈のように駆けめぐりながらも
条件反射で電源を切り、ケースを開けてみました。
HDDアクセスLEDとマザーボードを接続するビニール線が端から端まで焦げていました。
ケース前面のリセットスウィッチ、パワーオンLED、HDDアクセスLEDとマザーボードやドーターボード上のコネクタを結ぶケーブル(ビニール線)が束になっているのですが、焼け焦げたのはHDDアクセスLEDの線のみです。
幸い、マザーボード上のコネクタ附近に焦げはありません。
ほかの部分も異常がないように見えます。
燃えたのはビニール線だけだったようです。
つまり、HDDランプ用の線のどこかがショートして線全体が電熱線のようになったのだと思います。
電源交換など保守作業中になにかしでかしてしまったのでしょうか。
(4)解決篇
LEDケーブル類の束を外して恐る恐る電源を入れたところ、意外にも正常に起動しました。
電源、マザーボード、アクセラレータといった主要部には問題ないようです。
不思議なことに、衝撃で電源が落ちる現象や電源オンオフの不具合も直っています。
これから察するに(1)〜(3)の問題はすべてLEDケーブルの接触不良または短絡が原因で起こっていたのかもしれません。
燃え落ちたHDDアクセスLED用ケーブルのLED側接続先をチェックするため、ケースを分解しました。
LED類は1枚の小さな基盤に収められ、本来はフロントパネルの所定位置にピンで固定されているはずです。
しかし、そのLED基盤は完全に外れており、基盤の裏側が金属シャーシに接触する状態になっています。
きっと、そのためにショートしてしまったのでしょう。
電源の不具合もそれで説明がつきます。ちょっとした衝撃で電源が切れたり、再起動していたのは、リセットスウィッチがショートでオンオフしてしまったためでしょう。
電源が入らなかったのもショートのためだと思います。
(現在、PowerTower4000は手許にないため、このあたりの構造は記憶を頼りに書いており、基盤の説明など細部は間違いがあるかもしれません)
LED基盤はネジ留めこそされていないもののプラスチックのピンでかっちりと固定されているべきもので輸送時の振動で外れるとは思えません。
たぶん最初からきちんと固定されていなかったのでしょう。
また、PowerTowerが到着して初めてケースを開けた時にまろび出てきたネジやプラスチックの破片の正体もわかりました。
これらはフロントパネル固定用ネジとそのネジ穴の破片だったようです。
6箇所あるフロントパネルのネジ穴のうち2箇所が破損していました。
たぶん、回しにくい場所にネジがついているのでヘンな角度でネジを入れてネジ穴を壊してしまったのだと思います。
このようないい加減な組立をする人間ならばLED基盤を適当にくっつけていたとしても不思議ではありません。
そう思うと自分の落ち度がなかったような気がして安心します。
というわけで原因も解明し、晴れ晴れと歌をうたいながら半田鏝を操りケーブルなどありあわせのパーツで復旧しました。
その夜、アメリカから日本に核ミサイルが降り注ぐ夢を見ました。
持って逃げる荷物にラップトップPCを入れるあたり、妙に生々しかったです。
ブッシュ政権によるイラク攻撃が話題になっていたころですね。
次回、HighFlyerお前もか、の巻。
原稿にたびたび出てくるスキャンダブラ(商品名ToastScan)というのは、AMIGAのRGB出力(水平走査周波数)を15kHzから約2倍の31kHzにして一般的なPCモニタが使用できるようにする機器。
AMIGAは、80年代にはまだ高価だったPCモニタを使用しなくても、TVモニタに映せるようヴィデオ出力を標準装備していたが、それに合わせてRGB出力の水平周波数も15kHzとなっていた。
80年代のPCは低解像度だったので、そうした低い水平周波数帯を使うPCも珍しくなく(NECのPC98は24kHzだった)80年代にはAMIGA専用モニタ以外にも15kHzや24kHzあたりが使えるデュアルシンクやトリシンクのPCモニタが普通に流通していたので問題はなかったのである。
しかし、90年代に入ってPCの高解像度化進むとマルチシンク・モニタが一般的となり、30kHz未満の水平周波数には対応しなくなったため、AMIGAで使えるモニタは少なくなった。
そこで登場したのがスキャンダブラで、AMIGA3000というモデルにはオンボードでスキャンダブラが搭載されているほか、数多くのサードパーティから外付けや内蔵のスキャンダブラがリリースされた。インタレース・モードでのフリッカを抑えるフリッカ・フィクサ機能を備えるものも多い。
なお、ゲーム機の映像をPCモニタに映すための機器として売られているアップスキャン・コンバータも似たようなものだが、AMIGAではたいてい使えない。
2011年1月29日(Saturday) 2:15:48
2011年1月28日(Friday) 23:32:56
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